建物の表面温度を下げる効果としては、実験環境下で最大11度の表面温度差が確認されています。
実験環境 | |
---|---|
場所 | 壁面 |
日時 | 2006年8月2日 |
天候 | くもり後はれ |
平均風速 | 2.3m |
日照 | 8.6h |
最高気温 | 34.2度 |
平均温度 | 67% |
壁面の熱流入量の実験結果より実験環境下においては、90%の削減が確認されています。
実験環境 | |
---|---|
場所 | 壁面 |
日時 | 2006年8月24日 |
天候 | 快晴 |
平均風速 | 1.9m |
日照 | 12.4h |
最高気温 | 35.4度 |
平均温度 | 55% |
カベルデの壁面の場合、道路の防音壁などに利用されている厚さ50mmのグラスウールとほぼ同等の吸音性能が確認されています。
※ただし低周波数域を除く
試験状況 | |
---|---|
試験年月日 | 2007年5月11日 9:00~11:00 |
温度,湿度,気圧 | 21.4℃,44.4%, 999.0hPa |
周波数条件 | 100~5kHz 1/3オクターブ |
測定機関 | 岡山県工業技術 センター |
測定者 | みのる産業 |
試料面積 | 10.98㎥ |
吸音率①:カベルデ植物無し 吸音率②:カベルデ植物有り 吸音率③:グラスウール(比較対象)
実験結果による試算から、壁面緑化100㎥の場合で、年間336.6㎏のCO2を削減できるという結果があります。
緑化壁面は高反射面(白色の金属板を設置した面)よりも温度低減効果が高く、また高反射面前の地表面温度が最大で約2.5℃上昇したのに対し、緑化壁面前の地表面温度は約6℃低下しました。
緑化壁面は高反射面と比較して、赤外領域の長波成分には大きな差は見られないものの、反射日射である短波成分は小さな値となっている。長波、短波放射量を合計した全放射量では、緑化面は灰色のペンキを塗装したコンクリート壁面よりも最大25W/㎥小さく、人への影響が小さい。
長波放射量の比較
短波放射量の比較
出所)佐々木澄他:鉛直壁面の素材の違いが街路空間の温熱環境に及ぼす影響の検討(その2),
日本建築学会大会学術講演梗概集(2012)
壁面緑化を成功させるには、設計時・施工時・施工後のメンテナンス時に、注意する点があります。
壁面緑化を検討したときにどのような注意点があるのか、表にまとめました。
設計時
項目 | 内容 |
---|---|
メンテナンス | 壁面緑化にメンテナンスが必要であることの認識・確認・了承 |
設置の条件 | 日照時間・風環境・メンテナンスの歩廊・隣地境界・斜線境界 緑化システム強度・灌水システムの使用・衛生設備・電気設備工事取合 |
特記仕様 | 養生期間の確保・発注時期・枯れ保証 各種取合い工事の区分表記 |
施工時
項目 | 内容 |
---|---|
検査方法 | 竣工時の仕様決定 |
取付時期計画 | 養生期間の決定(逆算して発注日程を計画) |
取合の確認 | 鉄骨工事(強度計算を含む)、 衛生設備工事 引渡までの給水手段の確保、 電源調査・電気設備工事 |
ユニット取付 | 入荷時の植物状態の確認、 全てのユニットの正常取付け確認 給水・電気設備の正常、 全てのユニットへの給水の確認 灌水コントローラーの正常運転・現場にあった設定 |
メンテナンス時
項目 | 内容 |
---|---|
灌水 施肥管理 |
液肥の有無・タイマー設定・漏水・詰まり・タイマーの電源に電池を使用した場合など電池切れの確認が必要。 施肥については灌水装置は液肥混入器を装備する必要がある。 ※警報装置を設置することでトラブルが回避できる。 |
病害虫管理 | 薬剤散布については、年3回程度は必要。予め病害虫が発生しやすい時期に予防手段として薬剤散布を実施する。定期巡回の際に発見する場合も多く、その場合は適宜実施 |
誘引・剪定・清掃 | 年2回程度は必要。つる植物は成長が早く上下の植物を覆い、他の植物の生育を阻害する場合がある。また枯れずとも水周りに枯れ葉がたまることがあるので定期的な清掃が必要。 |
除草 枯損時の補植 |
定期巡回時に行う。歩廊の有無・高所作業者の必要性など事前確認が必要。 植物の枯れの補植については、事前確保の確認が必要。 |
壁面緑化の種類には12のタイプがあります。これらの種類から設置条件・メンテナンス性・意匠性・コストなどを勘案して選択します。みのる産業では⑤・⑥(⑦)の緑化工法があります。
工法タイプ | 概要 | 工法タイプ | 概要 |
---|---|---|---|
①登はん型(補助資材無) | ナツヅタなどによる、付着根や吸盤によって壁面に直接登はん出来る植物を使用するタイプ。地植えで実施されることが多いが、プランターや屋上緑化の植栽基盤等によっても実施可能。 | ②登はん型(補助資材有) | 登はんできる植物を用い、補助資材(金網・ヤシ繊維・ワイヤー・メッュ)に上らせてゆき壁面緑化を構成させるタイプ。地植えで実施されることが多いが、プランターや屋上緑化の植栽基盤等によっても実施可能。 |
③下垂型(補助資材無) | 最上部のフロアレベルに設けられた植栽基盤から植物を下垂させるタイプ。補助資材を伴わない。 ヘデラ・カナリエンシスを用いる例が多いが、コトネアスターやほふく性のローズマリー、ビンカマジョールなども使用可能。 |
④下垂型(補助資材有) | 最上部のフロアレベルに設けられた植栽基盤から植物を下垂させるタイプ。補助資材を伴う。植物が下垂してゆく場合、付着根や吸盤をもつ種類でっても、補助資材によって壁面に付着しない。補助資材は植物が下垂していくときに補助材を捉えて安定することを期待するか、誘引・結束させる対象として設けられる。 |
⑤ユニット型 | あらかじめ植物が植え付け養生され、緑被が完成した状態で設置されるタイプ。完成直後に十分な緑をもった景観をつくることが可能。リザーブユニットを用意しておくことで、一部枯損が生じた場合にも取替えによって同様の景観を維持し続けられることが可能。 | ⑥プランター片面視認型 | プランターを垂直方向に複数設置するタイプのうち、壁面を背面にもち一方向からの景観を構成するタイプ。通常のプランター緑化と基本的な構成が変らず植えられる植物のバリエーションが多い。メンテナンスも比較的容易である。 |
⑦プランター両面視認 | プランターを垂直方向に複数設置するタイプのうち、壁面を背面にもち一方向からの景観を構成するタイプ。通常のプランター緑化と基本的な構成が変らず植えられる植物のバリエーションが多い。メンテナンスも比較的容易である。 | ⑧連続基盤(厚層タイプ) | 植栽基盤を垂直に配置するタイプ。根系を発達させる領域が連続しているので根詰まりしにくい。 |
⑨連続基盤(膜タイプ)型 | 植栽基盤を垂直に配置するタイプ。基盤の最前面が膜で構成され、膜の一部を切り欠いて植栽基盤と連続する部分に植物を植え込む方式。植物のバリエーションを増やせ、立体感を演出できる。 | ⑩バルコニー先端型 | 室内側からの緑の景観と、外側からの緑の外観を両立させられる工法であり、メンテナンス作業もバルコニー部から実施できるなどメリットの大きい工法である。 |
⑪ポケット交換型 | ニット自体を交換するのでなく、ポケット状の苗が収まるスペースに植物ポットを入れ込む方式での壁面緑化である。 ポット苗自体を交換できるため、室内緑化やイベントなどに利用しやすいことが特色である。 |
⑫コケ付着型 | コケを壁面に直接付着させるタイプである。タイルと一体化しているタイプもある。 |
※NPO法人屋上開発研究会 技術開発研究部会 美しい町を作るための壁面緑化 参照
崩れない固化培土でできているので、ケース類が不要。基盤材を保持する最低限の資材で壁面緑化が可能です。
自動灌水装置(警報装置つき)を組込むことにより、メンテナンスを出来るだけ少なく、また、健全に植物が生育できる環境になっています。ユニットの移動や交換が容易で植物の適応範囲が広く自由なデザインが可能です。また、屋内外を問わず緑化が可能。
カベルデの施工では、施工時に植物の苗を植えるパターンと、あらかじめ自社圃場で植物を育てた完成状態で施工する2パターンがあります。カベルデの施工と同時に植物が生い茂った状態をご希望の場合や、植栽を適切な時期に選べない場合は、完成状態での施工をお勧めします。
施工時に苗を植えた場合の植物の生育については、定点観測をご参考ください。
プランターとワイヤーメッシュを組み合わせた壁面緑化工法です。ワイヤーメッシュを用いることでコストを抑えた緑化が可能です。プランターは金属メッシュの内側にエクセルソイルを底面・側面を囲います。全ての面が空気に触れることで、培土の表面からの水分の気化熱でプランター内部の温度が下がります。また、根詰まりが起こらないので、植物が健全に育ちます。
植物は光合成を行い、水と二酸化炭素から炭水化物を合成し、自らの生長のためのエネルギーを獲得しています。
光合成は葉緑素で行われており、この葉緑素を合成するためには窒素が必要です。窒素が無ければ葉緑素が満足に合成されず、生長に必要なエネルギーを獲得することができません。結果、植物は健全に育つことができません(葉色減退の原因にもなります)。自然界の生態系の中で植物は、根を張る容量に制限が無く、また、落葉や昆虫の死骸などから堆肥ができ、必要な養分を得る事ができます。しかし壁面緑化や屋上緑化などの限られたスペースで、かつ人工的な場所で生きている植物は人為的に肥料を与えない限り必要な肥料を吸収することができません。
植物は生き物であり、人間と同じく水と栄養なくして生長、維持管理はできません。
土壌は大きく分けて固相と空隙に分かれます。固相は物理的に形を維持する相で、空隙は空気もしくは水分が存在できる場所です。植物の根は水や肥料を吸うほか、呼吸もしているため空気も必要です。この空隙にたまった水や空気を吸収して植物は生きています。植物は地上部が大きくなるに従い、必要となる水分や栄養の量も多くなります。また、倒伏しないように手を伸長させていきます。行き場を失った根はコンテナなどの内壁を沿うように根を伸ばしていきます。その結果、土壌内部の空隙が根によりどんどん少なくなっていく状態を“根詰まり”といいます。根詰まりを起こしたコンテナ内部は、水の通りが悪くなる、空気が足りなくなるなどの現象が起こり、植物が乾燥や酸欠によって衰弱・枯死にいたる場合があります。
植物を育てる上で、病害虫の発生は避けて通れません。自然界の生態系の中では食物連鎖の関係が築かれており、一部の有益な虫によって捕食されることもありますが、人工的に作られた都市緑化ではこのような環境は望めません。予防的には定期的に農薬による防除が必要です。特に注意が必要なのは夏季で、風通しの悪い株元部分に病気が発生しやすくなります。また、害虫は食害により直接的に植物に危害を加えるものと、排泄物が病気の原因になるものがあります。病害虫は放っておくと時に壊滅的な被害になりますので予防および定期的な目視による早期発見が非常に重要です。
名称 | 分類 | 害虫 | 病気 | ||
---|---|---|---|---|---|
オウゴンテイカカズラ | つる性 | カイガラムシ | なし | ||
オオイタビ | つる性 | カイガラムシ | なし | ||
カロライナジャスミン | つる性 | ||||
ツルニチニチソウ | つる性 | なし | なし | ||
テイカカズラ | つる性 | カイガラムシ | なし | ||
ハツユキカズラ | つる性 | カイガラムシ | なし | ||
ビナンカズラ | つる性 | カイガラムシ | なし | ||
ヒメイタビ | つる性 | カイガラムシ | なし | ||
ヘデラカナリエンシス | つる性 | スリップス | ハダニ | なし | |
ヘデラカナリエンシス バリエガータ | つる性 | スリップス | ハダニ | なし | |
ヘデラへリックス‘ゴールデンチャイルド’ | つる性 | スリップス | ハダニ | なし | |
ヘデラへリックス‘ナターシャ’ | つる性 | スリップス | ハダニ | なし | |
ヘデラへリックス‘ピッツバーグ’ | つる性 | スリップス | ハダニ | なし | |
ヘデラへリックス‘モナリザ’ | つる性 | スリップス | ハダニ | なし | |
アベリア‘ホープレイズ’ | 木本性 | なし | なし | ||
アベリア‘エドワードゴーチャー’ | 木本性 | なし | なし | ||
コクチナシ | 木本性 | カイガラムシ | オオスカシバ | スス病 | |
ヒペリカム・ヒデコート | 木本性 | アブラムシ | なし | ||
フィリフェラオーレア | 木本性 | なし | なし | ||
ブルーパシフィック | 木本性 | なし | なし | ||
ヤツデ | 木本性 | カイガラムシ | スス病 | ||
ユキヤナギ | 木本性 | カイガラムシ | アブラムシ | ウドンコ病 | |
ロニセラニティダ | 木本性 | ||||
ロニセラニティダ レモンビューティー | 木本性 | ||||
セキショウ(緑) | 多年草 | ハダニ | なし | ||
セキショウ(黄色) | 多年草 | ハダニ | なし | ||
ツワブキ | 多年草 | なし | なし | ||
ヒューケラ キャラメル | 多年草 | カイガラムシ | ウドンコ病 | ||
ヒューケラ シトロネル | 多年草 | カイガラムシ | ウドンコ病 | ||
ヒューケラ パリ | 多年草 | カイガラムシ | ウドンコ病 | ||
フイリノシラン | 多年草 | ||||
ワイヤープランツ | 多年草 | アブラムシ | ハダニ | なし | |
ゴーヤ | その他 | アブラムシ | ウドンコ病 | ベト病 | |
コケ | その他 | なし | なし | ||
タマシダ | その他 | なし | なし | ||
パッションフルーツ | その他 | ||||
ハボタン | その他 | アオムシ | ヨウトムシ | なし | |
バラ | その他 | アブラムシ | ハダニ | ウドンコ病 | ベト病 |
プリムラ | その他 | アブラムシ | ハダニ | 斑点病 |
つる植物の分類
巻きつる型 | 茎が螺旋状に巻きつき登はんする。 |
巻きひげ型 | 巻きひげを他のものに巻きつけて登はんする。 |
巻きひげ先端吸盤 | 巻きひげの先端に吸盤場の器官によって付着する。付着力は強い。 |
茎および葉柄トゲ | 長く伸びた葉柄が資材と接触した刺激で巻きつく。 |
吸着根 | 吸着根により付着し登はんする。壁面の室・形状により付着力は異なる。 |
寄りかかり | トゲや逆枝などにひっかけて登はんする。誘引・結束が不可欠。 |
植物にはそれぞれ生育に適した環境があります。
健全な植物にはある程度の耐性がありますが、環境に合った植物を選ぶことが大切です。
壁面緑化を維持していくためには、メンテナンスは欠かせません。また、メンテナンスをしっかり行う事が“成功の鍵”です。 以下に挙げるメンテナンスの項目は通常必要とされているものです。植物や環境によっても異なりますが、メンテナンスをする上での参考としてください。
それぞれの植物の生育について、ありのまま を記録しました。条件は自動灌水装置(液肥混入器)による灌水と病害虫予防のための薬剤散布のみで剪定等は行っていません。生育の早さや姿などの変化を記録しました。
実施した植物のリストと植栽の配置図は以下の通りです。
常緑の植物だけでなく、落葉するものも含め観察を目的に植栽しました。